ブラック吹奏楽部の実態と「笑ってコラえて!」の功罪

僕の経験と、友人・ニュースを通じて得た情報から、すべて主観で昨今の吹奏楽部の特徴をまとめてみました。今話題の部活問題を意識し、問題になりそうな点を中心に掲げます。もちろん、すべての吹奏楽部が以下のような環境・価値観のもとで部活動をしているわけではありません。

今回の記事は、大変長くなります。時間のない方は、太字部分を中心に流してお読みください。

価値観にまつわること

  • 楽器についてはほとんどの人間が無知なため、顧問・先輩の言い分や価値観が通りやすい環境がおのずとできる。理不尽な指示、パワハラ、間違った練習法がまかり通っている部活も少なくない。
  • はっきりと大きく返事をさせる。これが意外と大事なポイントで、返事がはきはきしている部員は、顧問から評価されやすい。逆に返事の小さい部員は、ほかの部員からあまり良い目で見られないこともある。
  • 中学時代の母校の部活を礼賛する雰囲気が、高校でも受け継がれる。その結果、高校の吹奏楽部では、強豪校出身と非強豪校出身の人間の対立や、強豪校出身同士の対立が起こる。
  • 朝練などを強要する学校も存在する。私は中学の頃、朝と昼休みを使って練習していたし、それが当然だと考えていた。勉強より部活を優先させる顧問もいるようである。
  • 一日サボれば隣にバレる、二日サボれば指揮者にバレる、三日サボれば客にバレる」これと似たような言葉は、吹奏楽経験者なら何度か聞かされている筈である。こういった一見金言らしい言葉の植え付けも、部活による土日の拘束に繋がっていると考える。
  • 顧問が熱心であるほど父母会の父兄は部活を褒め、顧問があまり熱心に練習をしないと父兄が顧問に不満を漏らす。部活を卒業したOBOGも、自分の母校の部活の大会の結果等に関心があるため、顧問にも部員にも期待がかかる。
  • 「感謝」という言葉がまかり通る。演奏を聴いている人や、支えてくれている人たちのために感謝しよう、という趣旨である。しかし、言葉だけが先行していて、実際に感謝を感じている部員がそれほど多くないような印象。
  • 強豪校ほど、身の回りのことが「きちんと」している。例えば、部室棟や遠征先の宿に入った際の靴を「これでもか」というほど綺麗にそろえたり、大会会場でも軍隊顔負けの整列をなして行動していたり、などである。
  • 部員同士で悪い点を見つけ次第指摘しあう、自助的な組織に仕上がっている場合が多い。挨拶をしない部員や返事をしない部員がいると、指摘の対象になる。

環境・練習のしかた

  • 上記のようなトップダウンの組織が形成されていく環境では、理不尽な指示や代々受け継がれてきた間違った練習方法が、今でも適用される。例えば、ランニング。ランニングは、演奏のためのスタミナを保持できる以外、何も効果はない。肺活量さえも上がらない。
  • 楽器を買わないと入部できない部活もごく一部存在する。
    楽器のバランスを整えるためであったり、用意できる楽器が限られているため、好きな楽器を選べない。
  • 生徒も顧問も土日が奪われる。なかには盆正月以外休みのない部活も存在した。
  • 正しく修理・手入れされていない状況のまま放置されている楽器が、学校に多く存在する。吹奏楽経験者とはいえど、全ての吹奏楽器の知識を持ち、各々の楽器が故障しているかどうかなどのコンディションが判断できる人はほとんどいない。
  • 個人練習のほかに、パート(同じ楽器同士)、セクション(同じ系統の楽器からなるグループ)など2人以上のグループを作って、生徒が自主的に練習する時間を与えられる。このような形で練習のためのグループがあらかじめ組織化されている。ただし、これに関しては、音楽の向上の為には絶対に必要なことだと考える。
  • 女子部員が多い。そのためか、いじめが起こりやすい。
  • コンクール前は体育館など広い場所での練習を行う。その際、冷房のない学校がほとんどだと思われる。そのような環境では楽器の音程や調子が狂い、体力は奪われる。
  • 大会直前には、会場に近い市民会館などの大ホールを借りて、響きや音量バランスの調整を行う。近くに市民会館のない学校が多く、基本的に土日のどちらかに街のホールへ向かう。
  • おもに中学の部活だが、父母会が存在する。私の学校の場合、夜練習を行う際には夕方に父母が公民館に集まっておにぎりを作り、練習中にそれらが提供された。その夜練習はおもに父母会の責任のもとで行うが、ほぼすべての部活で顧問がつかないと合奏は成立せず、当然顧問も責任を負う。
  • 強豪校は、各楽器ごとにプロ奏者を置いて練習しているところもある。技術向上のために、プロの外部講師や、アマチュアの楽団からボランティアを呼ぶ。
  • おもに高校の部活だが、恋愛禁止の部活も存在する。
  • 地域のイベントから演奏の依頼が来る。そのイベントの開催はもちろん、土日のどちらかである。

「笑ってコラえて!」のコーナー「吹奏楽の旅」の功罪

吹奏楽部の生徒や顧問の裏側に密着するのが、同番組の「吹奏楽の旅」というコーナーでした。

このコーナーはすでに終了しています。しかし、出演校はほとんどが全国大会に出場経験のある学校であることや、同番組がゴールデンタイムに放送されていることから鑑みれば、その影響は計り知れません。部活動中に同番組の録画映像を流す学校が多いのではないかとも懸念しています。上記同様、番組による問題点を以下に掲げます。

  • 部活動後に、その練習で感じたことや進歩した点、反省点などを書き、顧問に提出する練習ノートというものがある(Yahoo!ニュースのこの記事を参照)。全国大会常連の番組出演校の顧問が実施していたためか、同様にノート提出を真似する顧問が出現したように思える。ちなみに番組では、その強豪校の顧問が部員全員分のノートをチェックし終わるのが、午前2時頃であった。
  • 部活に一切関係のない、地元のお祭りに部員を参加させている顧問もいた。
  • しばしば、スパルタ顧問の映像を流す。「どのようにすれば上手くなるか」を教える顧問は少なく、ただ叱責したのち自分で練習させる顧問が多い
  • 出演校の生徒は従順で、返事も大きい
  • 出演校が進学校の場合、部活と勉強を両立している様子が映される。

映像を見た部員も顧問も、このように「強豪校が部員を叱責している厳しい環境下で、部員が奮闘している様子」に魅了され、生徒に厳しい指示を与える顧問や、それに従う部員が増えたのではないかと予想します。

全日本吹奏楽コンクール・全日本アンサンブルコンテスト

地区大会・県大会・東北大会の予選3回と全国大会の本戦1回からなるこの大会。しかし、このコンクールも多くの問題を孕んでいます。
  • 中学高校の場合、1団体の最大出場者数が55名。そのため、オーディションなどをもって競争させ、優秀な奏者の選別がなされる。
  • 大会は「指揮者コンクール」とも言われる。指揮者である顧問の裁量によって、部活が左右されるといっても過言ではない。当然、吹奏楽に関して何の知識もない顧問が赴任すれば、その部の技術の低下は免れない。逆も然りである。
  • 土曜が大会での出演、日曜が補助員としての参加、というパターンもあり、生徒と顧問の両方が大会のために土日を拘束されることがある。補助員は部員や顧問から構成され、全出演団体の演奏終了まで時間を拘束される場合がほとんどである。
  • 大会の協賛者が、部活問題を報じた朝日新聞社であることも注目。もちろん、率先して全日本吹奏楽連盟がこの環境を改めるべきであるが。
  • 他校の部員とすれ違うそのたびに、「こんにちは!」と声をかける
  • 演奏前後の起立着席が際の揃い具合や姿勢を、大会直前に顧問から指導される(大会の評価の対象にはならない)。




最後に…「ブラック吹奏楽部」を晒した理由

長くなりましたが、ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

「ブラック部活」が話題になっていますが、吹奏楽部のような部活動がブラック的な価値観を生産していることは、間違いないと思います。

もっとも問題なのは、上記のような多忙かつ統一された価値観に支配される環境のなかで、部員が在学中に新たな価値観を知ることは難しい、ということです。そのような滅私奉公的な価値観では、ブラックな労働環境で子どもたちが潰される可能性が大いにあります。しかも、ブラック企業の労働観は、部活動で培った価値観と似通っているゆえ、彼らが救いを求めにくくなることも懸念されます。精神を潰された後に、ようやく心の救いとなる新たな価値観に出会うのでは、遅いのです。

私は部活動にへの良い思い出がたくさんあります。しかし、お世話になった顧問の家庭が崩壊状態であったことや、教員の労働の問題を通じて、部活動の改善を願うようになり、このように意見を発信するようになりました。この記事を見た吹奏楽関係者の方が、自分の吹奏楽部で通用している価値観に疑問を持ってくださることを祈っています。

記事に関する意見をいただき次第、随時加筆を行っていきたいと考えております。是非とも、お待ちしております。

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