森達也監督によるドキュメンタリー映画『FAKE』の感想

こんにちは、Homerです。

森達也監督による、佐村河内守氏の姿に迫ったドキュメンタリー映画『FAKE』を観てきました。僕が予ねてから見るのを待ち望んでいた映画です。

一応、この映画を知らない方のために、あらすじを書きますね。

ある日、森達也氏が訪れたのはマンションの一室。そこには、ゴーストライターを抱えていたことでマスコミから糾弾された佐村河内守氏と、その妻が住んでいた。そして、彼を撮影する森達也氏や海外雑誌のインタビュアーらの手などによって、次第に佐村河内守の真実が明かされる。マスコミは佐村河内氏にとって悪なのか。妻は彼に対して何を感じているのか。新垣隆氏との関係は?そして佐村河内守氏は、嘘とどのように向き合ったのか。

こんなところでしょうか。

この映画を観る前に大学のOBの先輩と会って、「『FAKE』って映画を観ます。」と言ってきたんです。そして、映画には佐村河内守さんが出演することを先輩に伝えると、彼らは案の定笑うわけです。

僕は佐村河内氏をかばうように、「いや、佐村河内氏の素顔に迫る映画なので、嘘つきとかそういうイメージを払拭してくれると思いますよ。」って言いました。森達也氏には同監督作品である『A』『A2』のようなマスコミ批判や悪者とされた側を援護するイメージがあったのも、僕をそう言わしめた理由です。

ところが『FAKE』を見ると、森達也氏や佐村河内守氏を擁護した自分はまるで浅かった。この映画で、森達也氏のまた違った一面を見たゆえに、そう思いました。

以下、感想を述べます。最後の12分間や、確信を突きそうな部分を語るのはできるだけ避けますが、内容を予想させる表現がかなり出てきますので、映画の内容を事前に知りたくない方はご注意ください



メディアはクソなのか

僕は『FAKE』において、マスコミは確かにクソだと思いましたが、『A』『A2』で見た時ほどのマスコミの悪辣さは感じませんでした。

確かにメディアは佐村河内氏に関する嘘をついています。そしてメディアは、確実に佐村河内氏を追い詰めました。森達也さんの、「テレビはその場にいる出演者をいかに使うかしか考えていない」という言葉が、至言。僕は怒りよりも諦めを感じました。視聴率を取らなければならないメディアが佐村河内守氏を引っこ抜こうとするのは当然です。

メディア側は番組作りばかりが念頭にあるゆえ、佐村河内氏のほんとうの心の闇は理解できないんだろうな、と。

しかし、海外の雑誌編集者が佐村河内氏の部屋を訪れた時に、その編集者が彼の嘘の本質を見抜いていたように思えました。雑誌編集者がの前では、まるで佐村河内氏が自分の中に隠していた嘘に言い訳できずにいたように思えます。

あの外国人らの姿勢を見ていると、必ずしもメディアというものが悪いわけではない気がしてしまいます。ただ、佐村河内氏は彼らのインタビューを通じて相当メンタルをやられていたでしょうが。




佐村河内氏と妻の関係

映画の予告ポスターには「好きな人と見に来てほしい」と書いてありました。もし好きな人と見に行く意味があるとすれば、佐村河内氏と妻とのやりとりのシーンにあると思います。

森達也さんが佐村河内氏に対して妻のことを尋ねると、黙るんですよね。佐村河内さん、核心を突くような質問をされると、考え込んで黙るタイプなんだと思います。

そして、彼の妻に対する思いが次第にこみ上げてくるんでしょうね。彼が妻について語り出すシーンが印象深かったです。たぶん、佐村河内氏とその妻のやりとりに心が動いた人は、ここにひとつの「真実」を見るのでしょう。

僕はあくまで「ひとつの大きな嘘を乗り越えて繋がったひとつの人間関係の形だなー」くらいの感想でしたが、観る人によっては、その夫妻のやりとりに涙する人がいるかもしれません。僕は逆で、あの涙にさえ戦慄を覚えますが。




新垣隆氏と神山典士氏のずるさ

少なくとも森達也氏のカメラというフィルターを通して観る限りでは、佐村河内氏のゴーストライターといわれる新垣氏と、記者会見で彼を糾弾した神山典士氏は、悪のように映りました。とにかくずるいなあ、と。

彼らは佐村河内を金のために利用した確信犯であり、明らかに逃げているように見えるんですよね。2人が「真実」をいいように利用したことには相違ないでしょう。

彼らの逃げるような行動は、ある種、真実味で溢れているんですけどね。




「衝撃のラスト」と言われた12分間は

一部の人からすれば、最後の12分間への感想は「そんなの当たり前だ」くらいのものかもしれません。しかし、僕にとっては衝撃でした。

映画が終わって森さんが伝えたかったことに気づき、僕の中で徐々に、そして確実に気持ちが高ぶったのが分かりました。

やはり森さんが恐ろしい。タダ者ではない、と確信しました。

佐村河内氏に向けた森さんの問い方をひとつ間違えば、もっと大変なことになっていたはず。僕は、あれでよかったと思う。

真実は、彼の家にいた猫のみに見えていた。…そう思えたのはさすがに可笑しいでしょうか。

さいごに

『FAKE』、個人的にはかなりおすすめです。他のシーンも魅力的ですが、最後の12分のためにこの映画があると言っても、言い過ぎではない気がします。

特に、「彼は嘘をついている」と嘲笑う人々に、「嘘」がもっと根の深いものであることを知って欲しいですね。


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